お知らせ
今回はハムスターで時折遭遇する副腎疾患について紹介します。
高齢の特にゴールデンハムスターによくみられます。
左右の腎臓の頭内側に各々存在する小さな臓器が副腎という臓器です。
副腎の内側が髄質、外層が皮質で構成されています。
副腎皮質機能亢進症は、皮質から分泌されるコルチゾールというホルモンが過剰に分泌され、全身の脱毛、体重減少、多飲多尿など特徴的な症状が起こる病気です。
犬においては非常に一般的な病気なので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
最近尿の量が多く、水をたくさん飲む様になってきた、毛が全体的に薄くなってきて、食べてはいるけど体重も減ってきていかにも年をとった感じが、、、まさにこれが典型的な症状です。
診断には、この疾患に特徴的な臨床症状の評価、画像診断、血液検査によるホルモンの測定があるのですが、このホルモンの測定に関しては、現時点では診断方法が確立されていません。
もし行なったとしても検査のために複数回の採血、その都度全身麻酔が必要となり、現実的な方法とは言い難いのが現状です。
超音波検査にて副腎が大きくなっている所見と特徴的な臨床症状があればこの病気が強く疑われることとなります。
画像は当院で行なったゴールデンハムスターの超音波検査画像です。
左の副腎とくらべ右の副腎が巨大化しているのがわかるかと思います。
高齢のハムスターでは、他の内臓の問題を併発していることが多いため同時に他の臓器(肝臓、腎臓、精巣や子宮、心臓病の有無)も確認しています。
ちなみに超音波検査は、通常無麻酔で行います。
当院では保定ストレスを最小限にするため検査時間は通常3~5分以内ですませる様にしています。
治療は、薬剤の内服を行う内科治療と、外科治療がありますが、この病気を発症しているハムスターの多くは高齢であり、併発疾患を伴っていることも多く、外科治療(手術)は体への負担のが大きく安全度も決して高くないため、内科治療を行うことが多いです。
お知らせ
今回は飼い主さんからよく相談を受ける(ウサギの肥満)について少しお話したいと思います。
肥満のうさぎさん、はっきり言ってものすごく多いです。
まずは、うちの子が果たして肥満なのかどうかを確認するところから始まります。
ウサギという動物は、毛がふっくらしているため本当の体格が非常にわかりにくいです。
犬や猫の場合、太り具合、痩せ具合の指標、ボディコンディションスコア(BCS)を使用して評価を行います。実はウサギもウサギ版BCSで評価が行われています。
ウサギは完全草食動物であり、高繊維で低カロリーな牧草を主食としています。原因としては高カロリーであるペレットの多給、炭水化物の多い果物などのおやつを多くあげてしまっている。
運動不足など、、、
はい。ウサギの飼い主さんの多くはそれが原因で肥満や病気につながる事はすでにわかっているかと思いますので、あえてそこはさらっと触れるに留めますね。
まずは結論から言います。
腸の環境が悪いと太りやすくなる、という事です。
今回はうさぎにとっての盲腸の話をしたいと思います。
ウサギの盲腸は非常に大きく腹腔内のスペースの多くを占める臓器です。
大きさは胃のなんと10倍!
ブドウの房のような柔らかい盲腸便を作り出し、ウサギはそれを飲みこむ事でビタミンB群、ビタミンK、タンパク質など多くの栄養分を吸収する複雑な消化機構を有しています。
体が正常に働くためにはエネルギーが必要なのですが、この盲腸においてはVFA(揮発性脂肪酸)というエネルギー源が産生され、これがうさぎの健康にとって非常に重要な影響を与えていることがわかっています。
このVFAは、酢酸、酪酸、プロピオン酸で構成され、そのうち酢酸が多くの割合(60~70%)を占めているのですが、その酢酸に脂肪の分解作用があるため、このVFAが多く産生されれば脂肪の代謝が促進され太りにくくなる、という事です。
その他、VFAは良い腸内細菌叢を維持したり、また水分や電解質の吸収にも関わっており健康維持のためにかなり重要な因子と考えられています。
このVFAを多く産生させるために、盲腸を健康に保つことがキーポイントです。
盲腸を健康に保つためには、やはり牧草を主食として多く与え、適正な量のペレット、炭水化物の多いものはできるだけ避けることに尽きるかと思います。
腸の状態が健康であれば、大きくて綺麗な丸い形の硬便がたくさん出ているはずです。
毎日ではなくても、形の崩れた軟便が時々出たり、いびつな形の硬便が混ざっている場合、それは腸の慢性的なコンディション低下のサインです。
これまで様々なうさぎさんを診察してきましたが、実際に肥満の子は糞便の異常がみられていることが多い印象をもっています。
そういったうさぎさんは、ペレットを相当減らしたとしてもなかなか体重が落ちてくれないんですよね。
ちなみにダイエットのために基準量から大幅に下回る量までペレットを減らす事はお勧めできません。牧草だけではどうしても補えない栄養素もあるため、それを補うためのサプリメント的な意味合いがペレットにはあるからです。実際にペレットを極限まで減らしてる飼い主さんはここ最近多くその様な場合、筋肉がかなり落ちてしまっていたりするので今一度見直す様にしてください。
うさぎにとっての肥満は、脂肪肝や動脈硬化、うっ滞が起こりやすくなるなど健康にとっては確実にマイナス因子となります。
まずは盲腸にとって良い食餌、即ち、たっぷりの牧草、適正量のペレットと生野菜(おすすめはサラダ菜、セロリ、ブロッコリー、人参など)でバランスの良い食餌、そしてできるだけ炭水化物系は摂取させない、ことから始めていただき、それでも肥満や便の慢性的な異常がある場合は、腸の正常化を促すサプリメントをお勧めしています。
時間はかかるのですが、お腹の状態が良くなるにつれて、たくさん食べているのに不思議と体重が落ちてくる場合もあり、そもそも盲腸の状態を良化させること自体うさぎさんの健康にとってメリットばかりなので行なってみる価値は十分あるかと思います。
サプリメントは適正なものを選ぶ必要がありなんでも良いわけではありません。
わからない場合は是非相談してください。