歯から波及するウサギの様々な問題 | 札幌市北区の動物病院 マリモアニマルクリニック

病気についての話

歯から波及するウサギの様々な問題

ウサギの代表的な疾患の一つに不正咬合があります。

ウサギの歯は、歯根が生きている限り常に伸び続ける特徴を持っています。

これを常生歯と言います。

草が主食であるウサギは、1日のかなりの時間を咀嚼に費やしています。

歯は常に伸び続けるのですが、上顎と下顎の歯を擦り合わせることによる咬耗により、長さが調整され適切な咬合が維持されているわけです。

ウサギは、とにかく草をしっかり食べていないと咀嚼回数が減り、歯の咬耗不全が起こることで不正咬合を生じることになります。

まずは臼歯の高さが長くなり、わかりやすくいうと口がやや半開きの状態になり、

ウサギはそれでも物を食べるときには当然一生懸命咀嚼しようとします。うまく咬耗がおこらなくなると、噛んだときに歯そのものにかかる物理的な力が様々な方向にかかってきます。

その際には歯は横方向に倒れてくる場合が多く、ひつつの傾向として上顎臼歯は外方向、下顎臼歯は内側方向へ傾きます。

その結果、上顎では頬粘膜、下顎では舌が傷つき、口の中が痛くなるのでその結果食べられなくなるなどの症状が出てきます。この場合は、尖っている部位を削ったりして治療を行うわけですが、問題はそう単純にはいきません。

歯がやや長い状態で噛もうとするため、今度は歯根方向に咬合圧が加わり歯根に負担がかかり始め、それと同時に少しずつ上顎臼歯歯根は上の方へ、下顎骨臼歯歯根は下の方に向かってめり込む現象も同時に起こるのです。

歯根に負担がかかってくるためその結果歯根に炎症が起こったりするのですが、特に上顎の歯根の伸長が起こるとある一定のレベルまで進行することで、前の方の臼歯(前臼歯)では鼻腔に影響が、後ろの方の臼歯(後臼歯)では眼に影響が起こってきます。

歯に異常がおこることで、思わぬ場所の疾患につながるということですね。

問題は実はそれだけではありません。

不正咬合が重度になってくると我々人間と同じくウサギにおいても当然歯周病や齲歯(ムシ歯)なども起こってきます。

その際歯の隙間から口腔内に染み出してきた膿や慢性鼻炎の結果咽頭に流れてきた鼻汁などを、誤嚥することでたとえば肺炎が起こりやすくなったり、咽頭から中耳に感染が波及することで末梢性前庭疾患が、そしてさらに奥まで進めば内耳、最終的に細菌性脳炎にも繋がってくるのです。

一般的には脳症状を呈する場合には、原因としてEz(エンセファリトゾーン症)が一般的に話題に上がるのですが、実はこの細菌性脳炎も比較的一般的な原因の一つになっています。

他に基本的なこととして忘れてはならないのが、消化器への影響です。

不正咬合が生じると牧草を細かくすり潰せなくなり、荒い粒子(ぶつ切りの牧草)のまま胃へ入ってくるのでうっ滞も起こりやすくなり、またうまく噛めなくなるので食べる牧草の量が減ることで、繊維質摂取量が減り消化器全体に影響を及ぼしてきます。

整理すると、歯から鼻、眼、肺、中耳、脳、そして消化器まで影響があるというわけです。

若いうさぎさんにとっても高齢のうさぎさんにとっても、不正咬合のチェックはとてもメリットのあることなので一度調べてみてはいかがでしょうか?