モルモットにおいて卵巣の異常による内分泌性脱毛が生じる事があります。
一般的に腰あたりの側面が左右対処に毛が薄くなります。
卵巣から出るホルモンの分泌異常により、脱毛が起こるのですが、それ以外に食欲不振など飼い主さんにとって気になるような症状がみられることはありません。
異常な卵巣を肉眼で見ると中に水が溜まった風船のような感じです。
卵胞嚢腫といいます。腫という文字がついていますがこれは腫瘍ではありません。
もう一つ漿液性嚢胞腺腫というとてもよく似た病変ができることもあり、この場合は内分泌性の脱毛症状は起こらないとされています。
これら二つの嚢胞性の卵巣病変のことを卵巣嚢腫と呼んでいます。
時おりかなり大きくなる事があり、その際には周囲の腹部臓器が圧迫を受け、食欲の低下などの症状がみられることもあります。
その他卵巣には、顆粒膜細胞種、奇形腫などの腫瘍が発生することもあります。
診断には超音波検査が有効です。
脱毛などの臨床症状がある場合には卵巣疾患を疑い超音波検査へと進むわけですが、脱毛のおこらない漿液性嚢胞腺腫や腫瘍などの場合には触診で触知されたり、時には健康診断での超音波検査で偶発的に見つかることもあります。
また卵巣疾患は同時に子宮疾患に罹患していることも多いので、陰部からの出血などの子宮疾患にみられる症状から診断に至ることもあります。
卵胞嚢腫では、排卵を誘発するホルモン剤が有効な場合があるため、まずは試してみることとなります。
効果があれば嚢胞病変が小さくなります。
反対に漿液性嚢胞腺腫ではホルモン剤の効果が認められません。
また卵巣の病変は必ず1つだけとは限らず、複数の病変が混在することも普通にあり、そして超音波検査の画像所見では鑑別できないため、ホルモン剤による効果が認められない場合は基本的に手術により摘出し病理検査を行うことになります。
種々の理由により嚢胞性の卵巣で手術を選択しなかった場合には、臓器の圧迫を軽減する目的で体壁から卵巣の嚢胞に針を刺し水をぬく処置を定期的に繰り返すこともあります。
画像は当院で行なった卵巣子宮摘出手術時の画像です。
モルモットの卵巣は背中側に強固に付着していて、犬猫でおこなうお腹の真ん中での切開創から卵巣を取り出すことが非常に困難です。
そのため当院では体の横を1箇所切開し一つの術創から左右の卵巣と子宮を切除するアプローチ法で手術を行なっています。
なかなか症状が現れにくい疾患でもあるので、健康診断を行うことをお勧めします。
当院ではストレスに弱いモルモットさんに対しできるだけ負担が最小限となるよう優しい診察を心がけています。